Organic な「もの」「こと」「ひと」
  1. 国産有機
    サポーターズ
    活動事例集

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  2. 東京都大田区

    株式会社大治

    代表取締役社長 本多諭さん
    【大治とは】
    大田市場(東京都中央卸売市場)を拠点とする青果物仲卸業。卸売業として小売店・飲食店・ホテル・給食・仕出し等、様々な形態の取引先に対応するとともに、プロが目利きした生鮮食品を一般消費者が購入できるwebサイト『大田市場直送.com』も手がけています。取引先や消費者からの多岐にわたる要望に応えるため、有機JAS法施行以前の1990年代から有機農産物の取扱いを開始しました。以来、全国の有機生産者や有機農産物取扱い業者とのネットワークを構築するとともに、2003年7月には「有機JAS小分け認証」を取得(大田市場の場内では初の認証取得)。「有機農産物は安定供給が難しい」とよく言われますが、だからこそ大治は、年間を通して安定的に供給できることを目指し、その体制の構築に努めてきました。

これまで日本の有機農業は、仲間うちだけで固まっていたように思うのですが、
既存のシステムをうまく使うことで解決できる問題もあるし、
コストダウンが出来る場合もあるのです。

中間流通業者として“プロの仕事”を
「川上に位置する『生産者』と川下に位置する『小売業』『消費者』を結ぶ『中間流通業者』として、どうすれば必要とされるか、どうすれば存在意義を認めていただけるかを、常日頃から考えています。どんな商品であっても、弊社を通過することでその価値が上昇するような、“プロの仕事”を目指すことが、お客様の満足への一番の近道だと信じています」と話すのは、代表取締役の本多諭さん。大治では、提供する商品の品質管理や正確な出荷作業のため、様々な取組みを行っています。以下にはその一部です。

①品質保持
平成15年には有機農産物専門のパッケージセンターを、23年には低温物流センターを大田市場内に開設。大型冷蔵庫に低温作業所を併設し、農産物にとって最も重要な鮮度管理を徹底しています。

②放射性物質検査
福島原発事故による食品汚染への対応として放射線測定器を導入。平成24年2月から現在に至るまで、残留放射性物質の自主検査を継続しています。※現在は要望があったときのみの対応となっております。

③配送管理
すべての配送車に動態管理端末を搭載し、リアルタイムで各車両の運行状況を管理。各車両に「ドライバー」「コース」「ルート」「到着時間」を登録し、車両の現在位置や交通状況を把握。到着予定時間など、お客様からの問い合わせに対しても即時に対応できます。
本当の“顔が見える関係”を
「有機栽培をはじめ、“大規模ではないからこそ出来る農業”があります。手間ひまやコストがかかっている分、その価値を価格で表現していかなければ、生産者は仕事を継続できません。価値ある農産物を最良の状態で運ぶのが大切なのはもちろんのことですが、持続可能な適正価格を、消費者の皆さんが納得した上で購入していただけるよう、情報の伝え方まで考えていかなければならないと思っています」と本多さんは言います。「多くの場合、生産者の名前と顔写真を公開するだけで“生産者の顔が見える”ことをアピールしていますが、実際、その程度では“顔は見えていない”んですよね。なんとなく、安心・安全な雰囲気を演出しているだけ」とも。どんな生産者がどのような思いや志を持ち、どのような農法で栽培しているのかを極力詳しく把握し、卸売り先や消費者にその情報が伝わるように努力していきたいとのことで、有機JASマークはそのための一助になると考えているそうです。
「あなたのお客さんは誰ですか?」
農家や生産者グループとコミュニケーションをとる中で、「次は何を作ればいいですか?」と訊かれることがあるそうです。そんな時、本多さんは、「あなたのお客さんは誰ですか?」と、逆に問いかけてみるのだとか。市場や仲卸に商品を出荷したら終わり…ではなく、自分が育てた農産物を、どんな料理人や生活者が、どう料理して、どのように食べているのか、どんな感想を持っているのか…を想像したり調べたりして、次の仕事に繋げていく。ものづくりのプロフェッショナルとして、生産者にはそのような意識を持ってほしいと本多さんは考えています。そのために、大治も、取引先や消費者の反応や意見を、出来るだけ産地と共有するよう努めているとのこと。
仲卸業者をうまく使ってほしい
食べものの安全・安心を求める消費者が増えていると言われながらも、日本における有機農業はなかなか普及していないのが現状です。その原因がどこにあるのか、本多さんの意見をうかがってみました。「これまでは、生産も物流も販売も、“有機農産物の業界”の内部だけでなんとかしようとしてきたことが一つの原因として考えられます。同じ意志やこだわりを持った人たちが仲間うちだけで固まっていたように思うのです。けれども、農協・市場・仲卸など既存のシステムをうまく使うことで解決できる問題もあるし、コストダウンが可能になる場合もあります。自分たちだけで一からシステムを構築して管理・運営していくのは、膨大なお金と時間と労力がかかってしまい、もったいない。例えば、配送の方法に悩んだ結果、高い運賃を払って宅配便で出荷すると、そのコストは、生産者・お店・消費者の皆さんが負担することになってしまいます。『あいつらは有機農業のことなんて分かっていないから』と切り捨ててしまうのではなく、集荷も配送も、慣行農産物の物流に相乗りしてしまえばいい。」「また、大治は常に30~40台の配送用トラックを確保し、都内や近郊の飲食店にスピーディーに配送しています。“大田市場からラストワンマイル”の配送に関しては、きめ細やかな対応が可能ですから、そのネットワークも利用していただく価値があるかと思います」 大田市場で青果を扱っている業者は165社ほどありますが、積極的に有機農産物を手がけているのは、まだほんの数社。その中のリーダー的な存在として、大治は、“仲卸業者として有機農業の拡大に貢献できること”にチャンジし続けています。
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