Organic な「もの」「こと」「ひと」
  1. 国産有機
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    活動事例集

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  2. 埼玉県坂戸市

    弓削多醤油株式会社

    代表取締役(四代目当主) 弓削多洋一さん
    【弓削多醤油とは】
    大正12年に埼玉県坂戸市で創業、前身の醤油蔵を含めると200年以上の歴史を持つ醤油蔵。4代目当主の弓削多洋一氏は、「醤油は食品なので安心して口に入れられるものでなくてはいけない、醤油は調味料なのでうまくなければ意味がない。」という信念のもと、日々、妥協のない醤油づくりと向き合っています。

麹にこだわり、木桶仕込みにこだわった
醤油本来の美味しさを、多くの方々に知ってほしい。
有機JAS認証は、“最高の醤油を作っている証し”と考えています。

麹づくりを他人任せにしない
「一麹(いちこうじ)、二櫂(にかい)、三火入れ(さんひいれ)」。醤油づくりで特に大切なのは、その三点だと言われています。一番目に大切なのは麹づくりというわけですが、近年、効率化を図るため、麹づくりを分業して他社に任せる動きが進んでいます。そんな中、「麹づくりは絶対に他人任せにしない」という姿勢を貫いているのが弓削多醤油。「良い麹を作るためには、大豆の蒸し加減がとても重要」という弓削多洋一さんは、自らが杜氏業もこなし、現場に立ち続けている職人気質の社長です。海外出張に出る日も早朝4時から大豆を蒸し、そのままスーツに着替えて空港に向かうことも。
木桶仕込み天然醸造の味を次の世代に伝える
江戸時代まで、和食のベースとなる醤油・味噌・酢・味醂・酒などの基本調味料は木桶で作られていました。しかし、管理に手間ひまがかかることや費用対効果が合わないという理由で減少の一途をたどり、いまや醤油業界では木桶を主流に仕込みをしている醤油蔵は全国でも100軒ほどで、生産される醤油全体の中で木桶仕込みが占める割合は1%以下になってしまっています。「木桶には、長い時間をかけて、その地域独特、その蔵独特の微生物群が棲息するようになります。そういう微生物の働きで、菌を加えなくても自然に発酵が始まり、1年以上の時間をかけて醤油になっていきます。多くの乳酸菌や酵母の働きが複雑に絡み合い、時間をかけて発酵・熟成していくことで、奥行きのある味わいが生まれるわけです」と弓削多社長。これに対し金属や樹脂で作られたタンクの場合は、菌を加えて発酵させるメーカーが多いとのこと。人工的に菌を入れると勢いよく発酵が進むため短期間で製品化できますが、木桶のような味わいは望めないといいます。現在、弓削多醤油では30本の木桶を所有。季節や醤油の種類によってはタンクを使用することもありますが、あくまでも木桶仕込みが主流です。
有機JAS認証は、ブランド力をサポートしてくれる
弓削多醤油が有機の醤油づくりを始めたのは30年ほど前、有機JAS法が施行される以前のことでした。食生活の多様化にともない一般家庭で和食が登場する回数が減り、醤油の消費量も減っていく中、「小さい蔵は、自分のブランド力だけでは立ち行かない。何か差別化を計らなくては」と考えていたところ、ある消費者団体からの要望もあってスタートしたのだそうです。その後、有機JAS認証を取得。弓削多社長によれば、「国内のバイヤーさん達も、有機JASマークがついていることに一定の評価をしてくれますが、特にものを言うのは海外への輸出時です」とのこと。木桶仕込みの有機醤油は海外の展示会でも好評を博し、現在、アメリカ・イギリス・オーストラリア・シンガポール・香港・台湾で、弓削多の醤油が愛用されています。また、有機醤油の搾りかすは、北海道で牛の飼料の一部として有効利用されているとのこと。
有機の醤油づくりを継続するための課題
有機の醤油づくりでは、工場内の管理でいくつかの注意点があり、作業する人の負担が増えます。“その負担を引き受けてでも有機にすることの意味”を、スタッフ全員が十分に理解していないと続けることは困難だと弓削多社長は感じているそうです。「自分一人ががむしゃらに有機に取り組んでいる…というのではなく、社員全員の知識や理解を深めていくことが大きな課題です。」
都心にマイクロブルワリーを
木桶仕込みのもろみの匂いを嗅いだり、醤油搾りを体験したり、搾りたての生醤油を味わったり…と、醤油づくりを体感できる醤油のテーマパーク「醤遊王国」を持つ弓削多醤油。次の大きな目標は、“都心部で醤油を作ること”なのだとか。「まずは醤油に興味を持ってほしい。そして、奥深い醤油の世界を知ってほしい。そのためには、多くの方々が見に来てくれるような施設を作ることが必要だと思っています」と弓削多社長。近い将来、都内のどこかで、醤油の香ばしい香りが漂うことになるのかもしれません。
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