Organic な「もの」「こと」「ひと」
  1. 国産有機
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    活動事例集

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  2. 大阪府大阪市

    帝塚山ミルメルシー

    オーナーシェフ 玉城雄湖さん
    【帝塚山ミルメルシーとは】
    「本当に安心な食材で作った料理をお届けする」をモットーとするフレンチレストラン。野菜ソムリエの資格を持つシェフが、生産者とのコミュニケーションを大事にしながら食材を集め、素材に合わせた調理法やユニークで斬新な組み合わせを考え、“自らが楽しみながら料理する”ことを大切に運営しています。また、レストランメイドの味を気軽に楽しんでいただけるよう、ケータリングや、料理を真空パックでお届けする通販、お客様と会話しながら販売できるマルシェへの出店等、様々な取り組みをおこなっています。

開店当時に生まれて、ここでお食い初めをした子が、
受験の合格祝いの食事をしに来たり、
人生で初めてのお酒を飲んだりすることも。
レストランは、お客様の人生に関われる場所なんです。

誰もが安心して外食できる場所を作りたい
オーナーシェフの玉城雄湖さんは、高校卒業後ニュージランドに渡航。現地レストランで修行を積み、帰国後は名古屋・大阪のホテルやフレンチレストラン勤務を経て、ミルメルシーを開店しました。ホテルに勤務していた頃にマクロビオティックに出会い、食材や調理法が体調や体質に直結することを実感。それをきっかけに食材を改めて見直すようになり、オーガニックに辿り着いたといいます。

「オーガニックで丁寧に作られた野菜は、味も濃いし、調理した時の香りが際立っていることに驚きました。ただ、値段が張るので、独立後しばらくはオーガニックから離れてしまっていたんです。」と玉城さん。「けれど、以前体感したオーガニック食材の力が忘れられず、プロの料理人として、“本当は、さらに良い食材で料理をしたい”という葛藤を常に抱えていました。一番上の素材、最もこだわった仕事を経験してしまった後は、“値段が高いのだから仕方ない”と、自分に言い訳をするのが苦しくなってしまったんですね。」 さらに、奥様の食物アレルギーや喘息がひどく、安心して外食できる場所がなかったということにも後押しされ、「採算は後回し。誰もが安心して外食できる場所を作ろう」と、オーガニックレストランへと舵を切りました。
食材はもちろん、内装にもこだわる
ミルメルシーでは、可能な限りオーガニックの農産物を使っています(有機JAS認証がない場合でも、農薬を一切使わないものや自然栽培のもの)。さらに、海産物は天然もの、塩・砂糖・オリーブオイル等はオーガニックのもの。菜種油は化学物質で抽出したものではなくコールドプレスで圧搾したもの。小麦は栽培履歴がはっきり分かる国内産のもの。副素材として加工食品を使う場合は、合成食品添加物や化学調味料を使用していないもの、そして、遺伝子組み換えをおこなっていないもの。小さいお子さんや化学物質に過敏な方もレストランでの食事を楽しんでいただけるようにと、食材の一つひとつを厳選しています。

そして、農産物を仕入れる際は生産者を直接訪ねるのが玉城さんの流儀。「農家さんに目利きのアドバイスをもらったり、時には調理法まで教えてもらったりしながら、畑直送で仕入れています。オーガニックなら何でもいい…ではなく、農家さんの人となりや本当に美味しいかどうか等を吟味して仕入れ先を選んでいます」とのこと。さらに、「食材がオーガニックなのだから店舗もオーガニックに」と、家具はもちろん、壁や床の材料や塗料など内装素材もできる限りケミカルフリーなものを用いて改装しました。
あるがままの自然の姿を受け入れ、工夫をプラスする
オーガニックは素材の安定供給が難しいとよく言われますが、玉城さんはそれをネガティブなこととは捉えていません。「作物を育てるということは、様々な自然の要因に左右されやすい不安定なものなのです。それをマイナス要素として捉えるのではなく、『昔の暮らしを思えば、こういうのって当たり前のことだったよね。本来の自然な姿に立ち返って暮らしていくのって、ちょっと新鮮で面白かったりもするよね』と捉える姿勢が、オーガニック食品を扱う者にとって大切なことかなと思っています。『オーガニックだから不安定なのは仕方ない』」と上から目線で“許容”するのではなく、『そういったものである』と、まず“受容”すること。そもそも、天からの恵みを人間の都合でコントロール出来るだなんて思わないこと。すべての価値観をそこに寄せていくのが、私の考えるオーガニックライフです」。

…とはいえ、プロの料理人・経営者として、“複数の調達ルートを常に確保しておく”、”ある野菜が入手できなくなった場合、代替品で対応できるようメニューを考えておく”等、オーガニック農産物を取り扱うための工夫は決して怠っていません。また、オーガニックな調味料は一般品に比べて確かに高くなりがちですが、味や香りがしっかりしているため、調理に工夫をすれば少量でも味付けがまとまりやすいそうです。
相手の状況に配慮する優しさがオーガニックを広げる
生産者やお客様とのコミュニケーションをはかる上で、玉城さんが最も大切にしていること。それは、「オーガニックが正しい。そうでないものは間違い…という二元論で語らないこと」。それから、「相手の生活や事情に配慮した伝え方をすること」だといいます。

「たとえば、初めて有機栽培に取り組むとき、生産者には不安や怖さがあるのが当然です。うまくいかなかった場合、収入や暮らしはどうなってしまうのだろう…と。そこに配慮して出来る限り不安を取り除く努力をしたい。生産者がオーガニックという扉を開けてくれたことに、まずは感謝の気持ちを持つことが大事だと思っています。」 「それがどんなに正しくて有益な情報であっても、受け取る側が幸せで楽しいと感じている時でないと、新しいことは受け入れられないものです。相手がポジティブな環境で受け取れるように配慮しているか? それまでの相手の人生を否定するような物言いになっていないか? 1回に1つのことに絞って伝えているか(自分の思い優先で“伝えすぎて”はいないか)? 等、気を付けるようにしています。」 「たとえ身内であっても、相手を100%コントロール下に置くことは出来ないし、また、その必要もありません。自分の人生において重要だと思っていることが、相手にとっても大切であるとは限らない。相手の価値観や理解の度合いを無視して押し付けてしまうと、自分も相手も、抱えなくてもいいストレスを抱え込んでしまうことになります」。…等々、玉城さんの言葉には、“一人ひとりの歩幅やスピードに合わせた伝え方”が大切なのだという思いが溢れていました。

「開店当時に生まれて、ここでお食い初めをした子が、合格祝いの食事をしに来たり、人生で初めてのお酒を飲んだりすることも。お客様の人生に関わることができるレストランという場所を、これからも大切に維持していきたいですね。」
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