2022/2/15
VOL.15
3.11以降の国産農産物って安心なの?
~いま、私たちの食卓は…

ここ2年間ほど、一般の生活者が健康問題で一番気にしていたのは、なんといってもコロナウィルスのことでしょう。しかしそれ以前は、東日本大震災時の福島第一原発事故により、どれほどの放射性物質が放出され、どこにどれくらいの量が飛散したのか、食材や食卓への影響はどの程度のものなのか…が、日本に住む多くの人々の関心事でした。最近あまり話題にならない放射性物質と日本の食卓との関係は、いま、いったいどうなっているのでしょう? 農林水産省・厚生労働省・消費者庁などがそれぞれのwebサイトで随時最新の情報を発表していますが、今回は、消費者団体(生協)が独自に行なった検査についてご紹介します。

3.11の原発事故直後から、日本生活協同組合連合会(以下「日本生協連」)には、会員生協や組合員からの不安の声が殺到したといいます。当時の基準として設定されていた「暫定規制値」を超過した牛肉の流通が報道されたり、「そもそも暫定規制値の設定数値自体が緩いのではないか?」という疑念の声が高まったりした時期でした。日本生協連はそういった不安に応えるため、取扱い商品の放射性物質検査を行なうとともに、品質保証本部を中心に学習会を開催するなど様々な活動を進めました。

それらの活動の中で始まったのが、組合員が日常的に調理して口にしている“普段の食事”を丸ごと検査する『摂取量調査(陰膳調査)』です。全国の生協に協力を呼び掛けたところ、19都県の生協が食事サンプルの提供をすることになり、2011年11月より調査が開始されました。各家庭で2日分の食事(おやつや飲料も含む)を1人分多く用意し、日本生協連の商品検査センターに送って、放射性物質の有無を検査したのです。2020年まで10年間にも及んだこの検査で、合計3005件(うち、福島県内では1150件)の食事サンプルがチェックされました。測定時間は1サンプルあたり14時間かかるとのことですから、それがどれだけ大掛かりな検査だったのかが想像できますね。

2011年度から2013年度までは放射性セシウムを微量検出する食品サンプルがありましたが、それを1年間食べ続けた場合の内部被ばく線量を算出した結果、年間許容線量の1ミリシーベルト(1mSv/年)に対して十分に低い量となりました。また、2014年度以降、放射性セシウムが検出されたサンプルはありませんでした。(現在でも、より柔軟な方法に切り替えながら検査は継続しているそうです。)

「国が発表する“問題ない数値”が信用できない」という声や、「やはり不安は消えないので、東日本で栽培された野菜は食べない」等、今も尚、様々な声が存在しています。だからこそ、丁寧な調査や情報開示を行なっている生産者やお店はどこなのかを選択し、「ここは信用できる」という、“自分の中でのものさし”を持つことが大切なのでしょう。

【追記】福島第一原発事故以前から、自然界には放射性カリウム(カリウム40)が存在し、食品中にも微量存在することが分かっていました。日本生協連の検査ではその放射性カリウムも合わせて測定しました。その結果、検査したすべての食事サンプルから放射性カリウムが検出されましたが、福島県とそれ以外の地域で数値の差は見られなかったといいます。

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