2022/1/1
VOL.12
ヴィーガンブームの今、ベジタリアンが気を付けたいこと
~“自己流”は避けた方がいい理由

ベジタリアン(Vegetarian)は日本語では菜食主義者と訳されます。その言葉通り、肉類や魚類などの動物性食品を避け、野菜・きのこ・果物・穀類・豆類などの植物性食品を中心に摂る食生活を実践する人のことを指しています。

最近、日本でも、ベジタリアンやヴィーガンという言葉が認知されるようになってきましたね。健康維持・環境保護・動物愛護等々、様々な理由から菜食を始める人が増えているようです。 けれども、「動物性食品を避ければいい」「たんぱく質は豆から摂取すればいいい」と安直にスタートする“自己流の菜食”には、実はリスクも隠れているということを、知っておいていただきたいのです。

まず、ベジタリアン(菜食主義者)の種類についてご紹介しましょう。こだわるポイントによって、いくつかの流派があります。

■ヴィーガン(Vegan)
いわゆる「完全菜食主義者」。肉、魚はもちろん、卵・乳・蜂蜜などを摂取しない。また、ウールや牛革、動物性原料を使用したヘアケア製品なども使用しない人が多い。日本では精進料理が伝統的なヴィーガン対応食に当てはまると考えてよい(だしは、鰹節でなく干し椎茸を使用)。

■フルータリアン(fruitarian)
「果実常食者」とも呼ばれる。ヴィーガンよりも更に厳格な菜食主義者と言われており、“収穫しても、その植物自体の命に関わらない”、フルーツ(実=リンゴやみかん)やナッツ類を食べる人のことを指す。

■オリエンタル・ベジタリアン(oriental vegetarian)
ヴィーガンと同じ食生活を基本とするが、五葷(ごくん)と呼ばれる野菜(にら・にんにく・ねぎ・らっきょう・浅葱)を食べないスタイルで、アジア圏で実践者が多い。台湾の「素食」は、オリエンタル・ベジタリアン対応の食事となっている。

■ラクト・ベジタリアン ( lacto vegetarian)
ラクトは乳という意味。乳製品は摂取し、肉類・魚類は口にしない。宗教上の理由で行われることも多く、インドに実践者が多い。

■オボ・ベジタリアン (ovo vegetarian)
オボは卵という意味。卵・卵製品を摂取し、肉類・魚類は口にしない。

■ラクト・オボ・ベジタリアン(lacto-ovo vegetarian)
一般的に「ベジタリアン」という場合は、ラクト・オボの食生活を指している。肉類・魚類は避けるが、乳・卵は摂取する。欧米に実践者が多い。

■ペスコタリアン (pescetarian)
肉類は口にしないが、魚・卵・乳製品は食べる。

■ポーヨ・ベジタリアン(Pollo-Vegetarian)
肉類の中では鶏肉のみ食べ、魚・卵・乳も食べる。

■セミ・ベジタリアン(Semi-Vegetarian)
フレキシタリアン(Flexitarian)とも呼ばれる。植物性食品をベースにしつつ、場合によっては肉類も食べるなど柔軟性のある食生活を送る人々。

次に、菜食主義者が抱えやすいと言われているリスクについて記しておきます。

❶骨折リスクが高い
菜食主義者は骨折リスクが高い(ヴィーガンの場合、一般的な食生活実践者より40%以上高い)ことが、オックスフォード大学の研究で判明している。「BMIが低すぎる」「カルシウムとタンパク質の摂取量が少なすぎる」というのが主な原因。カルシウムの吸収にはマグネシウムを一緒に摂ることが必須だが、野菜からカルシウムとマグネシウムを同時に摂ることは非常に困難。反対に、シーフード(特に、あさり・シジミ・牡蠣などの貝類)には、カルシウムもマグネシウムも豊富に含まれている。

❷お肌・髪・爪のハリやツヤが失われ、老けてみえる
肌・髪・爪を綺麗に保つには、主成分であるたんぱく質が必要不可欠だが、植物性食品だけで十分なたんぱく質を接種するのはかなり難しい。

❸鬱や癌、不眠症や貧血のリスクが上がる
これは菜食主義者に限ったことではないが、オメガ3脂肪酸やビタミンDが不足しがちな食生活を行っていると「乳がん」や「うつ病」のリスクが上がる。また、鉄分の摂取が不足すると脳内でセロトニンという幸福ホルモンが低下し、鬱症状が起こりやすいことがわかっている。セロトニンは夜にはメラトニンという睡眠誘発ホルモンに変化するので、鉄分不足は不眠症の原因にもなる。鉄分の吸収は、大豆や野菜に含まれている「非ヘム鉄」より、肉や魚に含まれている「ヘム鉄」の方が圧倒的に有利。月経の度に鉄分を失う女性は男性よりも貧血のリスクが高くなる。

❹免疫力や集中力が低下したり、イライラしたりする
動物性食品でないと摂れない必須栄養素(ビタミンB12など)があるため、菜食主義の場合、栄養不十分で免疫力が低下しやすくなる。こういった栄養不足で怖いのは、本人も周囲の人々も、限界がくるまで気づきにくいということ。「風邪をひきやすいのは生まれつきの体質のせい」「ボーっとしやすいのは、本人の責任感や努力が足りないから」と思い込んでいる場合も多い。

❺赤ちゃんが低体重で産まれるリスクが上がる
栄養状態が悪く鉄分が不足しがちな妊婦さんからは低体重児が産まれるリスクが高い。また、低体重で生まれた子は、将来、生活習慣病になるリスクが高いことが分かっている。

≪健康的に菜食を実践するために≫
食の選択肢が狭まるということは、限られた食材から必要十分な栄養素を摂取しなければならないということで、健康維持が難しくなります。それでも菜食主義を選びたいと考える方は、栄養学に詳しい医師と相談しながら、「健康に害のない食事」「自分の体質やライフスタイルに適した食生活」を見つけて実践していくことをお薦めします。「自分が健康で美しく過ごせる食生活」が1番大切であることを忘れないでいてください。「カロリーや栄養バランスを意識する」「オーガニックフードを心がける」など、極端な菜食主義生活を選択すること以外にも、健康や環境に対してアプローチする方法はあります。

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