2021/9/1
VOL.4
コロナの時代、ジャパンブルー(藍)を身近に

「サルベストロール」という名前を聞いたことのある方はいらっしゃいますか? 近年、欧米の医療現場で注目されている天然の植物成分なのですが、日本ではまだ馴染みがなく、一般の生活者にはほとんど知られていません。

サルベストロールとは、植物にカビや細菌が付着した際、植物自身が防御反応として生成する物質です。本来はすべての果実や野菜に含まれており、皮・種・中果皮・根などに、黒い斑点となって現れることもあります。

このサルベストロール、実は、がん細胞特有の酵素(CYP1B1)と反応し、抗がん物質となってがん細胞を排除する働きをするのです。従来の抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞までも攻撃してしまうため副作用のリスクがあるのですが、サルベストロールの場合、正常な細胞には影響がない(CYP1B1がない細胞には反応しない)ことから、天然の抗がん剤として欧米の医療現場で注目されているというわけです。

サルベストロールは動物の体内で生成することができません。自然界の動物はサルベストロールを豊富に含む植物を食べることにより、体内に発生したがん細胞を死滅させていると考えられています。さて、人間の場合はどうでしょう? …残念なことに、近代農業で生産されている農作物において、サルベストロールの含有量は大幅に低下しています。その理由は下記の通りです。

①農薬の使用
防カビ剤を含む農薬が、害虫・真菌感染・雑草侵入などを抑えるようになったため、植物が本来備えているサルベストロールの量が低下してしまった。(真菌の刺激が少なくなると、サルベストロールはほとんど生成されなくなることが分かっています。)

②品種改良
サルベストロールは植物の辛味や苦味成分に含まれているので、現代の消費者の好みに合わせて辛みや苦みを抑えたり甘味を増したりといった「品種改良」が、含有量低下の一因となった。

③食品加工
ジュースや植物油の雑味を特殊フィルターで除去する加工により、サルベストロールも除去されてしまう。

④流通
作物が十分に熟して美味しくなってきた頃、天敵からの攻撃に備えるためにサルベストロールの生成量が増加する。しかし現在の流通システムでは、収穫や運搬の際に傷みにくいよう、また、店頭で日持ちするよう、完熟前に早期収穫してしまうことが多い。

このように、様々な事情によって、サルベストロールが摂取しにくくなっている現代ですが、朗報があります。「オーガニック農産物は、農薬を使った農産物に比べ、3~30倍も多くのサルベストロールを含んでいる」というデータが発表されたのです。農薬に頼らない農法では、植物が本来もっている生命力や抵抗力が発揮されるのでしょう。

医療現場ではサルベストロールを主原料としたサプリメントが使用されますが、現状ではまだ非常に高価なものです。健康維持が目的の場合は、毎日の食事でオーガニック農産物をしっかりと摂取するのが現実的な対策でしょう。サルベストロールは熱に強いのが特徴で、加熱調理によって失われることはほとんどありませんから、サラダだけでなく様々な調理法で野菜料理を楽しんでください。水に溶けやすいという特徴もあるので、茹で汁が無駄にならない野菜スープなどで摂るのが特にお薦めです。

サルベストロールが発見・注目されるまでの歩み

●サンダーランド大学(イギリス)薬学部名誉教授のダン・バーク博士が、1997年、がん細胞と正常細胞とを鑑別する研究でCYP1B1という酵素ががん細胞にのみ特異的に増加することを発見。CYP1B1ががん細胞に固有の酵素であり、正常細胞ではほぼ検出されないことを北米のがん専門誌「キャンサー・リサーチ」誌に発表。

●ハーバード大学(アメリカ)の「ダナ・ファーバーがん研究所」でも、多種のがん細胞のサンプル3300件のほとんどにCYP1B1の発現を確認。「がん細胞と正常細胞を見分ける酵素」としてCYP1B1の存在が認められた。さらに、2002年、CYP1B1と対になる天然物質として、サルベストロールが発見された。

●デ・モントフォート大学(イギリス)薬学部の医薬品化学者であるゲリー・ポッター元教授が、サルベストロールにがん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導する作用があることを発見。イギリスのがん専門誌「British Journal of Cancer」など、サルベストロールに関する論文を複数発表し、医療現場で注目されるようになった。
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